感染!?

親知らずの歯茎が腫れたと訴える患者さんがいらっしゃったときに、レントゲンの写真などを参考にしながら「歯の周りから汚れが入り込んで感染を起こしちゃってるみたいですね」と言う風に説明することがあります。すると「え!感染?」とびっくりされる方がいらっしゃいます。

感染という言葉は、菌やウイルスなどの微生物が体内に侵入し、定着して増殖することと定義されています。従って、侵入した菌やウイルスの病原性が低く、引き起こされる症状が軽微であったり、体のごく一部にとどまっていたり、あるいはまったく症状が無くても侵入・定着・増殖さえしていれば感染ということになります。

つまりどういうことが言いたいかと言うと、引き起こされる結果が重大でない場合でも感染という言葉を使うということです。一般的に感染してしまったというとなんとなく入院が必要で、一つ間違えば死んでしまうようなイメージを持ちますが、実際にはもっと軽い状態も感染に含まれます。エボラ出血熱やエイズや新型コロナウイルスも感染と言いますが、ニキビや虫歯や歯肉炎もれっきとした感染なのです。

ちなみにエボラ出血熱やエイズや新型コロナウイルス感染症などを引き起こすような病原体がその辺に存在したら大問題ですが、ニキビや虫歯や歯肉炎などを引き起こす病原体は皆さんの皮膚や口の中に必ずいる病原体です。 その偏在性の差が病気の深刻さの差になっているとも言えるでしょう。

歯科医師としても患者さんをわざわざ怖がらせるような言い方は避けていますが、正確にお伝えしようとする中でこのようにちょっとドキッとするような言い方になってしまうということも時にはあるということだと思います。