虫歯の有無は確認するのに歯周病の有無を確認しないのはおかしい

歯を失う原因の大半は虫歯か歯周病です。そういった意味では予防のために歯科医院に行って虫歯のチェックだけをして歯周病のチェックをしないのは不十分です。

日本人は平均すると寿命を迎えるころには約半分の歯を失います。親知らずを含めない永久歯の数は28本ですから、14本ほどは死ぬまでに失うわけです。やや乱暴な推算ですが、その半分弱は歯周病によって失うわけですから6~7本は歯周病によって歯を失う計算になります。

しかし、歯科医師としての実感として、国民の歯周病予防への意識は虫歯予防への意識より低いように感じられ、虫歯ほどは積極的に治療と予防をしていこうという雰囲気が希薄なのではと感じることが多々あります。

この大きな原因は、教育期間中は歯周病で歯を失う事はまずないからだと思います。どういうことかというと、子供でも虫歯を放置すれば歯が痛くなり、やがては歯を失う原因になるのに対して、子供は免疫異常などの特殊なケースを除いて歯周病には罹患せず、また歯周病によって歯を失う事はないからです。従って、教育を行う側もすぐに歯を失う原因にはならない歯周病の事はとりあえずは置いておこうということになり、子供でも歯を失う原因になりうる虫歯予防に関する啓発ばかり行うということになります。子供のうちは歯周病よりも虫歯に焦点を当てた予防教育をすることは理にかなっていますが、それと同時に30~40代になると虫歯のに加えて歯周病も歯を失う大きなリスクになることを教育、啓発の際にからなず付け加えるべきだと思います。

現在の学校教育の場で昔よりは歯周病の事について触れることが多くなってきているのかもしれませんが、少なくとも歯周病を現在の危機として捉えなければならない現在の30歳代以上の日本人は教育の場で歯周病の事はほとんど学んでいないと思います。歯周病は虫歯と同様に重要な口腔疾患ですが、国民の間ではその認識が十分に高いとは言えないと思います。そしてこのことが歯科医院での歯周病治療や予防の難しさを増していると感じます。

虫歯は本人が痛みや不都合を感じた時点では詰め物をしたり、神経の治療をするなどして歯を残せることが多いですが、歯周病は痛みや不都合を感じた時点ではもう手遅れで抜かなければならない状態になっていることが多いです。30歳以上の方は虫歯チェックをするなら併せて歯周病チェックをすることをおすすめします。もちろん、小学生でも歯肉炎にはなりますので、歯肉炎や歯周病の予防は若いうちから始めることに越したことはありません。