歯学部の勉強は壮大なストーリー仕立て
映画の中には一見互いに関係ないような複数のストーリーが途中のある地点で繋がって一つのストーリーとなるものがありますが、私はそのような仕立ての映画は全体像をつかむのに難儀するのでどちらかというと苦手です。
歯学部のカリキュラムもまさにそのような感じで、最初のうちはそれぞれの科目が一見全く関係ない別々の事柄として始まるので、その難解さも相まって大変退屈です。2年生頃から始まる生化学や生理学、組織学、理工学、微生物学といったいわゆる基礎系科目がまさにそれです。
生化学では糖、たんぱく質、脂質の種類や構造について学び、一方生理学ではナトリウムポンプは何ぞやとか血液の酸塩基平衡ついて学び、また組織学では実習室で腸の細胞をスケッチし、理工学では応力ひずみ曲線を覚えて、微生物学では細菌の正式名称の綴りを暗記させられといった感じで、それぞれが全く別のストーリーとして始まります。学ぶ者としてはこれらが一体歯科医師としての仕事にどう繋がってくるのか全く見えない上に、それぞれの科目は難解かつ試験では大量の不合格者とそれに続く再試験といった具合でストレスフルです。
願わくば「歯が痛いという患者さんが来ました。まず最初に何をしたらよいでしょうか?」みたいなところから始めてくれればストーリーの全体像がつかみやすいですし、いかにも歯医者さんぽく良さそうなのですが、そうはいかないわけです。
しかし3年、4年と学年が進み臨床系と呼ばれる科目の履修が始まると、それぞれがバラバラだったストーリーが少しずつつながり始めます。それでも本当に少しずつで、映画のように、ある時点で一気につながるという風ではなく、じわじわとつながっていくわけですが、総じて臨床系科目は「あー、これとこれがそう繋がっていたのか!」の連続で、ある意味少しずつ報われていきます。そして全ての科目を履修し終わるくらいの頃には、学んできた全てが一つの壮大なストーリーになっていたことに気づくわけです。
脱線になりますが、この壮大なストーリーにあまり関りが無く、内容も法律や制度に関する事が多く暗記中心で退屈な科目が公衆衛生学です。当時は本当に嫌いでした。
もしこれから歯学部に入り歯科医師になろうとしている人や歯学部の1、2年生がこれをお読みでしたら、最初はつまらないけど後半で伏線回収があって楽しくなるからがんばって下さいとお伝えしたいところです。まあ楽しくなるとは言ってもそれ以上に大変なことの方が多いのですが。