カルシウムは歯を強くしないかも

大人の歯はカルシウムで強くならない

カルシウムは歯を作るのに重要な成分ですから、歯が顎の骨の中で作られている子供のうちはカルシウムの摂取の量が歯の丈夫さを左右するかもしれません。しかし、大人になって歯が生えきってしまうと歯はほとんど代謝を行わないので、カルシウムをいくら摂取しても歯は丈夫にはなりません。

歯の象牙質のうち、神経の接する歯の深い箇所は歯が生えてからもほんの少しずつですが作られ続けます。セメント質と呼ばれる部分も大人になってもごくわずかですが成長します。しかし、歯が生えてしまうと歯の露出している部分を構成するエナメル質は全く代謝を行わず、成長することもありません。ですのでカルシウムをいくら摂取しても虫歯に対して歯が強くなることはありません。虫歯防止には歯磨きを始めとした口腔ケアあるのみなのです。

歯を強くするのはフッ素

では生えきった歯自体を強くするような口腔ケアの方法はないのかというと、一つだけ方法があります。フッ素です。フッ素を塗布したり、フッ素が含まれる歯磨き粉を使用したりすることによって、歯の主成分であるヒドロキシアパタイトをフルオロアパタイトに置換し、虫歯菌の出す酸に対して耐性が強い歯に変えることができます。

ちなみに現在わが国ではフッ素の錠剤摂取や水道水への添加といったフッ素内服を積極的に行っていませんが、内服をしたとしても効果があるのは子供のうちだけで、大人が内服しても効果はほとんどありません。効果があるのは歯磨き粉に含ませるなど外からフッ素を供給する場合のみです。

カルシウムはたくさん摂ればいいというものではない

さて、では子供のうちならカルシウムを摂れば摂るほど歯が強くなるかと言ったらこれもそうではありません。必要以上の量を摂取しても吸収されないかもしくは排出されてしまうからです。もちろん子供も大人も一日当たりの必要量カルシウムを摂取することはとても重要ですが、だからと言って過剰に摂取しても意味はないということです。

更に、歯の結晶を構成するヒドロキシアパタイトの成分はカルシウムだけではなくリンもその成分になっています。また歯の象牙質にはタンパク質も含まれています。そのタンパク質や歯自体を作るためにはビタミン類も必須です。従って歯の発育のためにはカルシウムだけではなく、様々な栄養素をバランスよく摂取する必要があるということです。

全ての栄養素を過不足なく摂る

様々な栄養素をバランスよく摂取することは、歯だけではなく全身の健康のために大切であり、また子供だけではなく成人の健康のためにも大切です。どんな年齢であっても、特定の栄養素や食品だけを集中して摂り、他の栄養素がおろそかになることは健康のためには得てして良くないことなので注意が必要だと思います。

そういう意味では「どの栄養素をたくさん摂るべきか」というより「どの栄養素が不足しているか」という視点の方が重要です。