セラミック矯正はやってはいけない?
セラミック矯正のネガティブキャンペーン?
最近歯科関係のYouTubeチャンネルやTwitterなどを見ているとセラミック矯正のネガティブキャンペーンが行われているように思います。「絶対にやってはいけない」「自分はセラミック矯正をしたけど、後悔した」「歯科医師自身が絶対に受けない治療」などなど、否定的な意見が目立ちます。
自分の見解を述べると、虫歯になったことのない、なんでもない歯を、歯並びを治すためだけにわざわざ削ってセラミックにすることはしない方が良いと思います。少なくとも自分が歯並びが悪くてもセラミック矯正は絶対に受けたくありません。
しかし、もともと治療した歯が多く、その歯が変色したりして歯並びも悪くなってきた場合に見た目をきれいにするためにセラミックで治療し直すのは良いことです。虫歯などの治療、およびそのやり直しとしてセラミックで歯を治すこと自体は正当な治療法です。
セラミック矯正とは?
セラミック矯正とは主に前歯の歯並びを治す目的で、一度に4本~6本ほど、場合によってはそれ以上の歯を削り、かぶせ物をしてあげることにより見た目の歯並びを良くする治療法です。
通常の矯正は年単位の治療期間が必要なのに対し、セラミック矯正では早ければ数週間、長くても数か月くらいの治療期間で済みます。通常の矯正装置は時に痛みを伴い、食事もしにくく、物も挟まり、見た目も悪いというデメリットがありますが、セラミック矯正にはそれがない分身体的負担は少ないと思います。
また歯並びの他に歯の色が悪い場合、セラミックにすることによって歯自体の見た目も改善できるというメリットがあります。
このようなメリットがあることから一定の需要があり、セラミック矯正は行われているようです。しかしそのメリットを大きく打ち消すほどのデメリットがあります。
セラミック矯正のデメリットは?
何でもない健康な歯を削ることは歯の寿命を短くします。しっかり治療したとしても、一度治療した歯は健康な歯より寿命は短いです。加えて、経年劣化により歯とかぶせ物の間に段差ができることにより虫歯とともに歯周病にもかかりやすくなります。
また歯の生えている方向を変えるためだけに本来する必要のない神経の除去を行い、歯の見えている部分のほとんどを削り、取り土台を立て直すことが必要な場合も多いです。
歯科医師にとって健康な歯を削ったり、神経を取ることは、健康な歯を抜くことと同じくらい避けたい行為です。
曲がって生えている何本かの桜の木を、見た目が悪いからと言って根元に近いところで切り倒し、上に桜の造花をくくりつけることを誰がするでしょうか。セラミック矯正は言うなればそういうことをします。
そもそも矯正ですらない
歯科で言う矯正は、矯正装置を歯に装着し歯の根っこごと移動させる治療法のことを言うので、セラミック矯正は本当の意味での矯正ではありません。あくまでも虫歯のための治療法を、見た目の歯並び改善のために無理に適応していると言ってもいいでしょう。
セラミック矯正は学術用語ですらありません。おそらくこういった治療法を行う医療機関が患者さんにわかやすいように命名したものだと思います。
どうしても受ける場合はよく調べてから
治療に関する考え方やアプローチは歯科医師によっても様々ですので、私は歯科医師の先生方のそれぞれの知見に基づく治療法を最大限尊重していますが、セラミック矯正だけはどうしても受け入れがたいものがあります。
私が思うに、セラミック矯正を行っている歯科医師本人も自分はセラミック矯正を受けたいとは思わないはずです。健康な歯の価値を良く知る歯科医師だからこそ4本~6本もの健康な歯を削られるというのは嫌なはずです。
しかし、どのような治療を受けるかを最終的に決めるのは患者さん本人ですし、その選択の自由もあります。人によってはそれでもセラミック矯正を受けるメリットがあると考える方もいらっしゃるでしょう。しかしその前に是非よく調べてからお決めになることをおすすめします。
最初に少し触れたように、もともと治したい部分がかぶせ物がしてあったり、虫歯になっている場合はデメリットが少ないのでセラミック矯正のような治療法がおすすめな場合もあります。しかしその場合はあくまでも虫歯治療およびそのやり直しであって、セラミック矯正とは言いません。
いずれにしてもご自身の大切な歯のことですので、いわゆるセラミック矯正を検討中の方は、よく調べた上で判断し、場合によっては複数の医療機関を受診し相談してみるとよいかもしれません。