親の管理下から離れる思春期こそ予防を

最近は子供の歯が虫歯にならないように気をかける保護者が多く、何かあればすぐ歯科医院を受診し、定期健診も欠かさないという方が多いです。こういった近年の傾向もあり、実際に子供の虫歯は昔と比べて激減しました。

また成人も虫歯のみならず歯周病にも気を付け、歯科医院で定期的に歯石を除去しながら虫歯が無いかどうかなどのチェックを行う方も大変多く、80歳で20本以上の歯を残すという健康目標を達成する方も年々増加傾向にあります。

しかし中学生から大学生かけての頃が「お口の健康空白域」になっている事が多いです。保護者と一緒に歯科医院に来る頃は保護者の目も行き届いており、比較的虫歯の発生も少ないです。しかし中学生くらいになると保護者も過保護になってしまうことを嫌いますし、何より本人も独立心が強くなります。保護者も歯磨きくらい自分一人でやって、歯が痛いなら一人で歯医者さんに行ってきなさいということになり、本人も望むところだとばかりに事態が深刻になるまで歯科医院に行かないということがよくあります。そういったこともあってか、この年代は定期健診に来る人も少ないです。

出来てしまった虫歯は治せばいいのですが、そこには隠れた問題があります。

一度虫歯になった歯は、たとえちゃんと治療したとしても健康な歯より治療が必要になる確率が高くなります。それゆえ若い頃にできた虫歯は何度も虫歯になったり、治療したものが取れたりして治療を繰り返すということが多いです。何度も虫歯になり何度も治療で歯を削ることになりますから歯の寿命も短くなります。言わば「虫歯の種」がたくさん蒔かれるのが歯科医院と縁遠い思春期と言ってもいいかもしれません。

私自身も恥ずかしながら何本か治療済みの歯がありますが、いずれも最初に虫歯になったのは10代の頃だったと思います。それ以来何回かは再び治療が必要になりましたが、少なくとも大学を出てから新たに虫歯になった歯はありません。これは自己管理ができるようになったからです。しかし治療したことがある歯は自己管理の良し悪しを超えて、取れてしまったり、折れたり、割れたり、詰め物の下で再び虫歯になったりと、再び治療が必要になる確率が高いのです。

歯は生えてからの数年間が一番虫歯になりやすく最も虫歯に警戒すべき時期です。具体的な年齢で言うと、最初の永久歯が生える6~7歳から親知らずを除く永久歯が生え終わってから数年後の16~17歳です。残念ながら人生の中で一番歯科医院から足が遠のく時期と大きくかぶってしまっています。

この時期のお子さんを持つ保護者としては過保護になることを恐れずに歯科医院に定期健診に行かせ、できれば口の中に関しても関心を持った方がいいと思います。歯科医師として言うのははばかられますが、乳歯の健康は大変重要ですが、乳歯は時期が来れば抜けます。しかし永久歯は一生使わなければならないので、人生の中で虫歯予防に集中する10年間を選ぶとしたら、6~7歳から16~17歳の10年間にすべてを注ぎ込むくらいの姿勢が必要だと思います。この時期に自分で歯の健康を管理するということが身に付けば、残りの60~70年も自然に歯と口の健康について自己管理ができるようになると思いますし、何より早い時期に「虫歯の種」を蒔くことを防止できれば、その後の人生における虫歯とその治療を断然減らすことができます。

中学生、高校生。虫歯が無くても定期的に歯科医院に行ってください。行かせてください。