差し歯とは

「差し歯」という言葉は歯科専門用語ではないので決まった定義はなく、対応する歯科専門用語もありません。しかし一般的に以下のことを指すことが多いようです。

1. 神経の無い歯に「一体型の作り物の歯を差し込む」こと。一体構造。

2. 神経の無い歯に「土台を差し込んだ上でかぶせ物をする」こと。 二層構造。

3. 神経のある歯に「かぶせ物」をすること。

それぞれに、前歯だけを指す場合と奥歯を含める場合とがあるようです。

狭義ではもともと1の『神経の無い歯に一体型の作り物の歯を差し込んだ前歯』を指すことが多かったようですが、この手法は「ポストクラウン(歯冠継続歯)」と呼ばれる治療法で、現在ではほとんど行われることはありません。ですから場合によって患者さんが歯科医院などにおいて「差し歯が~」と話すと、このポストクラウンのことと解釈されて、「現在は差し歯で治療はしないんですよ」と説明する歯科医師もいるかもしれません。

しかし現在治療法としてよく行われる2と3を的確かつ簡潔に表現する言葉が他にあまりないので、広義では2と3を差し歯に含めることも多いようです。

インプラントは根っこを含めて完全に歯を失った歯茎に人工の歯根を埋め込む治療法ですが、これは一般的に差し歯とは言いません。差し歯は、少なくとも根っこが残っている状態の歯に人工物を装着する場合に使われる言葉です。

患者さんが歯科医師に説明する際は「差し歯」「かぶせ物」「詰め物」など一般的な表現で構わないと思います。歯から何かが取れても歯科医師は必ず口の中を診査して状態を把握してから治療をしますし、何かを装着する場合でもそれがどのような治療法であるか詳しく説明があると思いますから、「差し歯」「かぶせ物」「詰め物」のような言葉の定義がはっきりしなくても問題になることは少ないと思います。

患者さんが説明される場合はご自身が説明しやすい表現で話していただければ結構だと思います。