保険がきくかきかないかはどう決まる
大原則:健康保険は「病気」に対して給付
大前提として、健康保険が適応される条件として「病気であること」もしくは「病気の疑いがあること」がまず挙げられます。
虫歯は病気なので保険がききますが、ホワイトニングは病気ではないので保険がききません。
異常分娩は病気なので保険がききますが、正常分娩は病気ではないので保険がききません。
ほとんどあらゆる病気は保険がききますが、健康診断・人間ドックは病気ではないので保険がききません。
検診(健診)には健康保険が使えない
実際の運用がどうなっているかは別の話ですが、理屈としては以下のような微妙な線引きも起こりえます。
「このところ胃の具合が悪いので、異常がないか診てくれ」=通常の受診
↓
病気疑いなので保険がきく可能性が高い。
「何も不快なことはないが、胃に異常がないか診てくれ」=検診
↓
検診なので保険がきかない可能性が高い。
「歯、目、耳、鼻、胃、腸、肺、肘、肩、腰、膝、髪の毛、脳、全部具合が悪いので診てくれ」と訴えれば、理屈の上では人間ドック並みのことが健康保険で行える事になりますが、それが本当かどうか、診てくれる医師がいるかどうかが問題です。脳だけは保険で診てくれるかもしれません。
高額な治療法には健康保険が使えない
しかし、病気なら何でもかんでも保険がきくかと言ったらそうではありません。
虫歯になったら銀歯は保険がききますが、セラミックは保険がききません。
歯が抜けたら入れ歯は保険がききますが、インプラントは保険がききません。
生命保険用語でよく耳にする先進医療も保険がききません。
これには治療として贅沢なもの、コストがかかるもの、もしくは治療法が新しすぎて技術や安全性が認知・確立されていないものなども健康保険では適用しない、という原則があるからです。
治療費が高額であっても、その病気に対する治療法がそれ以外に選択肢が無く、かつ治療法として効果的と認められる場合は健康保険が適用になる場合もあります。
原則は3つ
まとめると
①病気に対する治療であること
②コストがかかりすぎないこと
③技術や安全性が確立され治療の効果が認められるもの
が概ね健康保険の適用対象であると言えるでしょう。
事故によるケガなどは一部健康保険適用対象外となる場合もあります。これにも細かいルールがありますがここでは説明を省略します。
原則的に予防にも健康保険は適用されませんが、病気の再発防止という意味では一部健康保険が適用されているケースもあります。しかし、病気になっていない状態への予防にはやはり健康保険は適用されません。とにかく病気であるかどうか、病名がつくかどうかが保険適用の可否を決める一番重要な要素なのです。
しかし「病気であるか否か」以外の基準があいまいなので、受けたい治療法が保険適応かどうかは医師・歯科医師や医療機関に直接尋ねないとわからないこともあると思います。
健康保険の枠組み以外での補助
国や自治体は以上の条件を満たさないと全く金銭的補助がないのかと言ったらそうではありません。健康保険の枠組みの外でも様々な補助があります。
具体的に例を挙げると、先ほど挙げた帝王切開などを行わない正常分娩での出産には健康保険こそ適用されませんが、出産育児一時金が適用されます。
また健康診断も健康保険は使えませんが、特定の年齢で受けられる法定健診は無料ですし、自治体や加入している健康保険組合によっては特定の健康診断が無料で受けられたり、補助が出る場合もあります。
医療費控除について少し
医療費控除は医療にかかる支出が所得から控除される税金の仕組みですが、適用範囲は健康保険とは異なります。
健康保険は高額なものなどが適用外となりますが、医療費控除はいくら治療が高額であっても適用除外されません。双方とも病気に対して適用されるという共通点がありますが、健康保険よりルールが多少おおらかと言うこともできます。通院にかかる交通費なども場合によって控除対象になるのも医療費控除の特徴です。ただし控除の上限はあるので注意が必要です。
健康保険と医療費控除の比較を個別の事案で見ていきましょう。
健康保険 | 医療費控除 | |
虫歯などの一般治療 | 〇 | 〇 |
インプラント | × | 〇 |
ホワイトニング | × | × |
病気が発見された健康診断 | × | 〇 |
病気が発見されなかった健康診断 | × | × |
健康保険は給付である一方、医療費は控除であるためその適用範囲に対する考え方も大きく異なります。ただ健康保険が適用される治療は全て医療費控除の対象となると考えていいと思います。