「虫歯で歯医者行ったのに歯石取られた」

虫歯で歯医者に行ったのに、すぐには虫歯の治療しないで歯石を取られたという不満を耳にすることがあります。しかし虫歯の治療に歯石は邪魔です。

歯石がある≒歯周病

歯石があるということは、多くの場合は歯周病であることを意味します。歯周病があると様々な面で虫歯の治療に支障が生じます。

歯石は虫歯治療の邪魔

まず歯石があると型を取るときに正確な型が取れず、詰め物やかぶせ物の合いが悪くなります。合いが悪いということは隙間ができてそこから虫歯ができたり、汚れが溜まって歯周病がさらに進行たりします。また虫歯をコンポジットレジンという白い詰め物で直接治そうとしても、歯石があると詰めることができません。

歯肉出血も虫歯治療の邪魔

次に歯周病があると些細な刺激で歯茎から出血します。虫歯を取る段階で少しでも歯茎に触れると出血して血がにじんでしまいコンポジットレジンで治せないですし、型を取ろうとしても血で汚れてしまって正確な型が取れません。

歯茎の腫れも虫歯治療の邪魔

さらに歯周病は歯茎が腫れます。かぶせ物などは歯と歯茎の境目付近にかぶせ物の端っこを設定することが多いのですが、歯茎が腫れているとこの設定がうまくいきません。また何より、歯茎が腫れて歯の根元を覆っていると、そこにある虫歯をうまく除去できません。

こういった理由で虫歯の治療の前に歯周病がある場合はその治療に着手して、歯石は除去し、歯茎から出血しないようにし、腫れはひかせておく必要があるのです。

1本の歯だけ歯周病になることはない

じゃあその虫歯の歯だけ歯周病の治療をして、歯石を除去したりすればいいじゃないかとお考えになるかもしれません。しかし、歯周病は1本の歯だけ歯周病という判定にはなりませんし、保険診療のプロトコルも全部の歯を1セットとして治療を進めていく体系になっています。なぜかと言うと、歯周病は口腔内清掃状態が悪かったり、加齢によって進行するので、特定の歯だけ歯周病になることはないからです。実際に前歯は比較的状態は良いが奥歯は状態が悪いなど、部位によって病態に差が出ることはありますが、1本だけ歯周病ということは事実上あり得ません。

虫歯1本を治療する目的で歯科医院に行ったのに口の中全体の歯石を除去するというのは、こうした理由があるからです。

理由が複雑なのが誤解の原因?

どんな歯科医院でも必ず歯石除去を先に行う理由の説明があるはずなのですが、これまで書いてきたように簡単ではない理由があるので、口頭で説明しきれないか、説明してもなかなか100%理解というところまで行くのが困難なのかもしれません。

虫歯と歯周病を治して一挙両得

いずれにしても歯石は百害あって一利なし、歯石があるのだったら除去しない手はありません。こうした場合はぜひ虫歯治療のついでに歯石も除去できたと前向きに捉えていただき、歯の健康と歯茎の健康を一度に手にしていただければよいと思います。