「学校検診では虫歯有りだったのに歯医者では虫歯無しと言われた」

「学校健診では虫歯有りと言われたのに、歯医者では虫歯無しと言われた。どちらかが間違っているはずだ。」という話を耳にすることがあります。

学校健診は精度が低い

結論を先に言うと、学校健診は理由があって精度が低いのでそうしたことが起こります。精度が低いのにわざわざ実施する理由を説明いたします。

例えばある学校に1000人の子供がいたとして、100人の子供に自分や保護者では発見できない隠れた虫歯があったとします。

そして1000人のうち、500人が歯科医院に定期的に通っているとします。

この条件の場合、学校での歯科健診が行われないと確率的には100人虫歯がある生徒のうち50人しか隠れた虫歯が発見できないことになります。

しかしこの学校に例えば90パーセントの精度の歯科健診が導入されると90人の隠れた虫歯を発見することができます。

このように、虫歯が発見される人数を50人から90人にすることが集団健診の目的なのです。10人くらいは見逃されることになりますし、逆に10人くらいは本当は虫歯は無いのに虫歯があることにされますが、これは事前にある程度予期されている結果とも言えます。

(注:虫歯がある人の割合や、健診での虫歯発見率などは仮定の話であり、実際とは異なります。)

健診の精度を上げない理由

ではそのミスを無くすためにもうちょっとちゃんと健診すればよいではないかとも思いますが、そのためには歯科医院のように生徒が横になり、歯科医院のように高性能の照明を用意し、場合によってはレントゲン撮影をいつでも撮影できる準備をした上で、歯科医院での健診と同じくらいの時間をかけてじっくり診る必要があります。しかし学校には限られた器材しありませんし、一度に多くの生徒の健診を行わなければならないとう条件下で、歯科医院と同様の健診環境を作るのは不可能です。

生徒全員が定期的に歯科医院で定期的に健診を受けていれば学校での健診は不要なのですが、それが実現困難な現状において、学校において現状のスタイルで健診を行い、虫歯があると疑われる者に関して歯科の受診を促すのが目下の最善の策ということになっています。

集団か個人かの違い

また是非ご理解をいただきたい事として、学校などで行われる健康診断は「スクリーニング」であるのに対して、歯科医院で行われるのは「診断」だということです。

「スクリーニング」はふるい分けとも言われ、対象の集団を病気がある可能性が高いグループと低いグループに分けることで、「診断」は対象の個人に対して病気の有無や病気の種類を確定させることです。

一見やっていることは似ていますが、目的が違うため精度も異なっています。歯科健診に限らず学校や職場での集団健診の場合は是非そのことをご理解の上、健診を受けていただければよろしいかと思います。