あちこち歯医者を変えない方がいい理由

どんな理由があるにせよ、できるだけあちこち歯医者を変えない方がいいです。理由は二つ、治療費用が高くなるという理由と、治療の経過がわからなくなるという理由からです。

理由1:治療費用が高くなる

歯医者を変えるたびに初診料がかかりますので費用がかさみます。初診料は3割負担の方だと790円の窓口負担なのに対して、再診料の窓口負担は170円です。歯医者を変えるたびに単純計算で620円損することになります。実際には検査や前処置もやり直す必要がある場合が多いので負担は更に大きくなります。

また、入れたばかりの詰め物、かぶせ物、入れ歯などの調子が調子が悪い場合は同じ歯科医院で処置し直すのであれば再診料だけで済んだり、調整という形でわずかな費用しからないことが多いですが、違う歯科医院での調整や再治療ではまた1からですから費用がかかります。ケースにもよりますが同じ歯科医院であれば治療のし直しをしたとしても費用があまりかからない事が多いです。

理由2:治療の経過がわからなくなる

歯科医院を変えることの弊害は費用面よりも診療情報が途切れることの方が問題だと思います。

治療をやり直すにしても初診時の状態や治療の経過がわかっていた方がよいのですが、歯科医院を変えるとそれまでの情報がゼロになります。現状では歯科医院間でカルテの内容やレントゲン写真などは共有していませんので、新しい歯科医院ではそれまでの流れを患者さんから聞いてどんな経過や治療をたどったかを想像するしかありません。そんなに複雑なケースでなければ大概はそれでも大きな問題はないのですが、少なくとも小さな問題ではありますし、絶対に大きな問題にならないとも言い切れません。

患者さんの判断で歯科医院を変える場合は紹介状はないと思いますが、紹介状の有無に関わらずその治療を最初からその目で見てきた歯科医師の方が適切な判断を下せる情報を多く持っていることに違いはありません。

例えばつけた銀歯がいまいち噛みづらかった場合、同じ歯科医院であれば噛み合わせを調整することにより、1回で終了し費用も再診料だけで終わるということもあります。違う歯科医院にかかっても同じように噛み合わせ調整で終了することもあるとは思いますが、それまでの診療情報が無いためレントゲンを撮り直して銀歯をやり直しなど、別の提案がされることもありうると思います。

また治療したのに歯がしみる場合、治療した歯科医師が診れば時間がたてば良くなる可能性があるので何もせずに経過観察しましょうということになり、実際に時間が経てば治ってしまう場合もあります。違う歯科医院にかかればやはりレントゲン撮影などの検査をして、場合によっては治療という判断がされる可能性もあります。

同じ歯科医院にかかることは患者さんの利益に

とにもかくにも治療後に何か問題があれば、まずは処置を行った歯科医師に伝えた方がその問題がスムーズに解決することが多いです。また、年単位の長期にわたるカルテやレントゲン写真などの診療記録は歯と口の健康の管理において大変価値のあるもので、患者さんにとっても長く歯を残し健康を保つのに有利に働くため、歯科医院はできるだけ変えない方がご自身のためにもなります。

しかし患者さんが歯科医院を変えようとするにはそれなりに理由があるはずです。引っ越しなどは仕方ない理由な場合が多いとは思いますが、治療のやり方や結果に納得がいかず疑問をいだいたという理由で歯科医院を変えるという方もいらっしゃいます。転院の理由として時にはそうしたケースがあるのも止むを得ないとは思いますが、必ず歯科医院を変える前に治療した歯科医師にどうしてそういう治療になるのか、どうしてそういう結果になったのか、あるいは解決する方法があるのかを聞いてください。不信感を持つに至った原因を解明する試みをせずに歯科医院を変えることは患者さんにとって不利益になるかもしれません。コミュニケーションを十分とったのに疑問は晴れず、信頼関係が崩れたという事であれば場合によっては歯科医院を変えることも止む得ないことだと思います。