国民皆歯科健診

先日ニュースで国民皆歯科健診を導入するという政府の方針が報道されました。

義務化とは言っても罰則があるわけではない

ニュースを見ていて「毎年の歯科健診が義務化」という表現を見かけましたが、これは誤解を招く表現で、健診を受けないと罰則があるという話ではありません。今回の話はあくまでも新たに法律に基づいた健診として定めようというもので、現在でも妊婦歯科健診、1歳6か月歯科健診、3歳歯科健診、学校歯科健診、40歳、50歳、60歳、70歳を対象に行われる歯周病検診などが義務や努力義務という形で法律で定められています。今回の国民皆歯科健診はこれらに加わえるような形で実施していこうという話です。

法律のことは詳しくないのでわかりませんが、ここでの義務とは自治体や学校、企業が健診を実施する義務があるという理解でいいのではないかと思います。

健診が増えたらといって歯医者が儲かるわけではない

またこの健診を導入することにより歯医者を儲けさせようとしているのではないかという一般の反応もありましたが、少なくとも長い目で見ると違います。こまめな健診により、早期発見早期治療をし、予防に対する関心を深め、重症化を防止して将来的な医療費を削減していこうという目的があります。国は医療費を削減するために健康保険の仕組みに手を入れ加え続けたことにより、現在ではかなり渋い診療報酬制度になっており、短期間での治療のし直しができないなど、時に本当に必要な治療も健康保険ではできないこともあり、医療を提供する側としてもやりにくいなと思うことがあるほどです。

そんな状況の中で、国が歯医者を儲けさせようという考えになるはずもありません。このように考えると更に高齢化が進む中、将来の高齢者の医療費を抑制させる一環として国民皆歯科健診を導入しようという国の考えが見えてきます。もし国が歯医者を儲けさせようとするならそんな面倒な事をせずに診療報酬に手を加えればいいのです。しかし歯医者が儲かるように診療報酬を変えようなんていうことは今後もあり得ないでしょう。

健診の目的は将来の医療費削減

また口腔衛生状態が良い人、つまり高齢でも歯が多く残っている人、歯周病の状態が良い人は認知症や循環器などの疾患も少なく全身的にも健康で、かかる医療費も少ないということがデータとしてはっきり出ています。 国民皆歯科健診の大きな目的はおそらくここにあると思います。歯科健診を定期的に受けてもらうことにより虫歯や歯周病を防止し、歯科のみならず医科における医療費までもを削減しようという狙いです。

これで得をするのは国だけではありません。歯も全身も健康でいられて医療費も少なくなり一番得をするのは国民一人一人です。今後この国民皆歯科健診がどのような形で実施されるかなど、まだわからないことも多いですが、そういった利益を国民が実際に得られる形で実施されるのであれば私はこの健診に大賛成です。