残根抜歯は大変

抜歯するということはどんな歯であっても患者さんにとっては大変なことです。しかし歯科医師にとっては大変な抜歯とそうではない抜歯があります。

抜くこと自体がそれほど大変ではない歯は、生え変わる時期を迎えた乳歯や歯周病でぐらぐらになった歯などで、麻酔さえ効いてしまえばあとは抜歯鉗子と呼ばれるペンチのような器材で簡単に抜けます。虫歯になってない上あごの親知らずも割と簡単に抜けます。

大変な抜歯の代表格は下あごに横に埋まった親知らずです。当院でもケースによっては大学病院の口腔外科に抜歯を依頼することがあるほど大変な抜歯で、歯肉の切開と抜歯後の縫合が必須で、時には骨の削合や歯の分割が必要になり、抜くのにも時間がかかり、術後も腫れたり痛みや出血が長引いたりすることもあり、患者さんにとっても身体的負担の大きい抜歯です。

そして歯科医師にとって地味に大変な抜歯が残根と呼ばれる歯の大部分が虫歯などによって失われた歯の抜歯です。何故大変かというと言うと、歯の頭の部分が無いため鉗子でつかむ場所がない上に、ヘーベルと言われる千枚通しのような形をした抜歯用器具をひっかける場所もないからです。状態としては石のくぼみにがっちりはまり込んだ石をペンチや千枚通しなどでほじくり出すようなもので、しかもそれを口の中で行うので難易度も高くなります。

残根だからと言って必ず時間のかかる大変な抜歯になるかといえばそうでもなく、とりかかってから1~2分で簡単に抜けてしまうケースもあり、やってみないと簡単なのか難しいのかがわからないのも残根抜歯の特徴です。

しかし抜くのに時間がかかっても、その歯が炎症を起こしてない限り抜いた後の経過は一般的には良好で、痛みや腫れなどのトラブルも少ないです。患者さんも長時間にわたって口を開けていなけらばならず、決して楽とは言えませんが、他の抜歯と比べると残根抜歯はどちらかというと歯科医師の方が苦労する抜歯と言ってもいいかもしれません。

なんにせよ虫歯になって残根状態になってしまったら抜歯しか選択肢はありませんし、抜くのも大変です。そのような状態になる前に歯科医院に行くことが大切だと思います。