麻酔はできればしない方がいい
当院でもそうですが、最近の歯科治療では治療中に患者さんの痛みを最小限にするために、割となんでもかんでも麻酔をします。更に麻酔注射自体の痛みを軽減するために表面麻酔を併用することが多いと思います。しかし原則としては麻酔はできるだけ使わない方が良いとされています。
大学時代の試験問題の選択肢に「歯髄保護対策のため歯牙の切削時は局所麻酔薬を使用する」というのがよく出てきたのを思い出しますが、これは誤答になります。この選択肢をわかりやすく言うと「歯の神経を保護するために歯を削る時は麻酔薬を使う」ということになりますが、そうではないということになります。なぜかと言うと、麻酔をしてしまうと歯の神経に摩擦熱などの過度な刺激が加わっても患者さんが痛みを訴えないため、歯の神経を含む組織を損傷しやすくなることはあっても、保護する事にはならないからということです。もっと簡単に言うと痛みを訴えないとやりすぎてしまうということでしょうか。
しかし実際問題、神経のある歯を削るときにはほとんどの場合麻酔をするでしょうし、麻酔をしたからと言ってなにか具体的な悪影響があるわけではないのでご安心ください。麻酔をしないに越したことはないけど、患者さんが痛みを訴えて治療が困難な場合はこの限りではない、ということになるでしょうか。
歯科治療の全てにおいて言えることですが、麻酔などの薬を使う事でも、歯を削ることでも、歯を抜くことでも、しなくて済むことはしないというのが原則です。何もしないことよりメリットがある場合にのみ治療介入するというのが現在の基本的な考え方になっています。
薬は何かしらの病気の時に飲むから役に立つのであって、何もない健康な体にはちょっとした毒でしかありません。歯科で使う麻酔薬も同じで、必要ないなら使わないに越したことはありませんが、治療時の痛みを無くするという大きなメリットがあるため、日常的に使われています。