歯科大学では虫歯を見つけたりする訓練はしない
「歯科医師=虫歯を見つけて治す人」というイメージがあるので、大学の歯学部では虫歯を見つけて治療する訓練をしこたまするのではないかと思うかもしれませんが、実際にはほとんどそういった実習もなければ試験もありません。
一番大きな理由としては歯科医師の免許を持たない学生は患者さんを治療できないため、実際に口の中にある虫歯を見つけて治療する機会が得られないという事が挙げられます。ペーパーテストでは印刷された写真を提示して出題するしかないので、虫歯で露骨に変色したり、歯に明らかに大きな穴が開いていたりするケースばかり出題される上、内容としてもその治療法や使用薬剤などについて問われることが多く、「虫歯はどこにあるでしょうか?」といった問題が出されることはほとんどありません。本当は学生のうちに隠れた虫歯を発見することもトレーニングすべきですが、印刷された紙の上でそれを行う事は困難です。
では大学歯学部において、虫歯に関してどのような教育が行われているかというと、虫歯の原因菌となる菌や、虫歯形成の生化学的機序、虫歯の成因論、修復法、治療用の薬剤、修復用材料、接着剤の硬化・接着機序に関する事など多岐にわたります。また模型を使用した実習ではプラスティック材料で充填したり、模型の歯を削り、型をとり、銀歯やかぶせ物を作ったりします。
虫歯治療以外の歯科治療に関しても言えることなのですが、大学教育では訓練を行うというより理論を学ぶということに重点が置かれています。そして治療において絶対にやってはいけない事にも重きを置かれている点も特徴的だと思います。絶対にやってはいけないことを学んだら、あとは免許を取ってらから実地で学ぶといった感じでしょうか。
そうしたことから、理屈から言えば免許を取りたての歯科医師はレントゲンにもはっきり写ってこないような微妙な虫歯を見落としがちになるとも言えます。技術的未熟さをカバーするためにも卒後の研修医制度があり、指導医のもと実地で訓練を重ねることにより新米歯科医師は徐々に微妙な虫歯も発見できるようになっていきます。