スーパーの手袋に違和感

新型コロナウイルスが流行し始めてから感染防止のためにスーパーマーケットのレジなどで店員さんが手袋を着用しているのをよく見かけます。医療従事者であれば誰もがあの光景は無意味だと思いますし、違和感を感じます。なぜか。その方法では肝炎などに対する感染防御効果はあっても新型コロナウイルスに対する感染防御効果はないからです。

手袋着用で店員さんは感染から身を守ることができるでしょうか。もし手にかすり傷があった場合には血液を介して感染する肝炎ウイルスなどの感染は防止することはできるかもしれません。しかし新型コロナウイルスは口や鼻などを介して感染しますので手袋の着用は無意味です。素手であろうと手袋をしていようと、汚染された手で自分の口や鼻を触ってしまえば感染の可能性が生じますので、手袋の着用の有無は新型コロナウイルス感染の確率を上げも下げもしません。逆に手袋をしているから安全だという油断から不用意に口や鼻の周囲を掻いたりすれば感染の確率を上げてしまうかもしれません。

次に、手袋着用で店員さんからお客さんへ感染を防げるでしょうか。これもNOです。店員さんの手袋が汚染されていればそれを介してお客さんも汚染されます。大勢のお客さんが触った買い物かごなどに触れた手袋は汚染されていますので、その手袋で別のお客さんに接すれば感染の機会は増大します。そのような理由もあり、お客さんから別のお客さんへの感染防御にも役に立ちません。

ではその代わりにスーパーなどの小売店ではどのようにしたらいいかと言えば、個人的には基本的な衛生対策は新型コロナウイルス流行以前と同じでいいと思います。ただし、頻回の手指消毒や換気は励行されるべきだと思います。

しかし、新型コロナウイルスに関して言えばスーパーマーケットは感染リスクの低い場所だと思います。新型コロナウイルス感染の主体は飛沫であると言われていますし、大勢の人がノーマスクで大声で話すような環境ではないので、過大な心配は不要だと思います。

それでもレジ係の手袋着用を続行したいのであれば、お客さんごとに手袋を替えることが望ましいです。それではコスト面で問題があるのであれば、次善策として手袋は替えずにお客さんごとに手袋をしたまま手洗いをするか、十分量のアルコールで手指消毒することです。よくおまじないのようにごく少量のアルコールで手指消毒をしている場面を見かけますが、それでは意味を成しません。手の先、手のひら、手の甲が全面的に濡れる量が必要です。

というわけで、医療従事者はあのレジの手袋は意味がないし、ずっと着用しっぱなしで逆に不潔だなと感じています。感染の機会を減らすには素手でもいいので頻回の手洗い、もしくは手指消毒が有効です。頻回の手洗いや消毒で手が荒れてしまうので、その対策としての手袋着用は有効なのではないかと思います。