「噛むと痛いですか?」は超重要
一言に虫歯と言っても全部が全部削って詰めればいいというわけではなく、その進行度合いや状態によって治療法が違いうので細かい診断が必要です。歯科で診断するためにはレントゲン写真の重要度が何と言っても高いのですが、症状の初期段階だったり、銀歯などによって虫歯が隠れたりするなどして、レントゲン写真だけでは診断が困難な事があります。そうした場合に重要になってくるのがものを噛んだりして痛みがあるかや、熱い物や冷たい物がしみるかどうかという患者さんの感覚が診断をする上で最大の手掛かりになることも多いです。
普段の患者さんとの会話の中で「痛くて眠れなくて大変でしたね」とか「入れ歯が折れてものが噛めないとどうにもなりませんよね」といったような形で、患者さんの気持ちに共感して患者さんと歯科医師の協働で病気を治していくというスタンスは現代の医療では重要なのですが、「噛むと痛いですか?」のような質問は必ずしも患者さんに共感するためだけにしているわけではありません。
時々「噛むと痛いですか?」というような質問をした時に、「噛むと痛いというより、何もしなくても痛くて痛み止めを飲んでも効かなくて夜も一睡もできなかった」のように患者さんがお答えになる場面に遭遇します。しかしこの質問は主にいわゆる咬合痛の有無を確認するためにしているので、このようなお答えだと咬合痛があるかどうかがわかりません。歯科医師としてはこの患者さんに自発痛があること、鎮痛薬を服用したことという二つの診断する上で必要な情報を得られたものの、咬合痛の有無はわかりませんので「それは大変でしたね。治療すれば痛みも引いてくると思いますし、何度か通っていただければ抜いたりしないで大丈夫だと思います。それで食事をして噛んだ時はお痛みはありますか?」というように共感も示した上で、改めて咬合痛の有無を確かめる質問をします。しかしこれに対して「いやー何もしなくても頭の方までずーっと痛いので食事も水分と栄養を取るためだけに何とか済ませたほどで」みたいにお答えになるともう・・・。
「噛むと痛いですか?」と同様に、歯科医師が診断のために良くする質問には「何もしないでも痛いですか?」や「熱い物はしみますか?」や「冷たいものはしみますか?」などがあります。患者さんとしては自分が一番困っていることに関してなんとかして欲しいという思いがあるので、歯科医師の質問が自分にとって重要ではない質問に感じてしまう場合もあるようです。先ほどの例のように、夜も眠れないほど痛い時は、物を噛むときの痛みや、熱い物や冷たいものがしみるかどうかは直接関係ないように思えますが、診断名を付けて治療法を決めるには不可欠な確認事項であることが多いです。
歯科医院でなんでそんなことを聞くんだろうと思うことがあっても、できるだけ正確にお答えいただけると幸いです。もちろん必要以上に簡潔に答える必要はありませんが、質問に対する核心部分についてお話しいただければ大変助かります。