虫歯が増えれば歯医者が儲かる?

世の中に虫歯が増えれば歯医者は儲かるかもしれませんが、それでも虫歯が増えて欲しい願う歯科医師はいません。仲の良い歯科医師同士で、相手がいかに儲けているかをからかうような、お酒を交えて下世話な話をする場でさえ、世の中にもっと虫歯が増えて欲しいなどというようなことを言う歯科医師もいません。おそらくこれには二つ理由があって、ひとつは歯科医師の多くが本当に虫歯が増えて欲しくない思っているということと、もう一つはお金を儲けるとしたら世の中に虫歯が増加する事に期待するより、社会的にも利益をもたらす形でお金儲けできる方法があるからです。

歯科医師は世の中から虫歯が無くなって欲しいと思っています。これはきれいごとではなく、料理人がおいしい料理をお客さんに提供したい思い、建築家が美しく機能的な建物を作りたいと思うのと同じで、職業人として自然な欲求だと思います。ただ、料理人がおいしい料理を作ればお金につながるし、建築家が美しく機能的な建物を建てればお金につながるのに比べて、歯科医師が虫歯が無くなるように努力することは一見自分で自分の首を絞めることになるかのように思えます。そしてこのことが、歯医者が虫歯をできるだけ増やしたいと思っているという誤解を生み出し、さらには歯科医師会が虫歯が減らないように水道水へのフッ素添加を反対しているというような陰謀論まで出てくる原因になっています。

社会的な利益と歯科医師自身の経済的利益を両立させる方法は、治療が必要なのに歯科医院に来ない人に来てもらうようにしたり、定期健診に通い虫歯や歯周病の予防をしていない人に定期的に歯科医院に来てもらうように働きかけることです。日本では歯科医院は虫歯になったら行くところという認識が優勢であるのに比べて、他の先進国では歯科医院は虫歯や歯周病にならないように定期的に行くところという意識が高いと言われています。現に日本は欧米に比べて虫歯や歯周病の有病率が高く、この原因として虫歯や歯周病に対する予防の意識が立ち遅れていることが指摘されています。このように予防のために歯医者に来てない人の需要を掘り起こせば歯科医院は経済的に潤いますし、国民も虫歯や歯周病の予防ができるという利益を得られます。

また自費治療を患者さんに勧めるのも歯科医師が儲けるための手法の一つですが、往々にして自費治療は治療の質が高いため、自費治療を行う事は比較的高価な治療費の対価とはなりますが、あくまでも患者さんの利益のために行います。例えばセラミックによる治療ですが、歯科医師の中であいにく前歯の治療が必要になった人は保険のプラスチック素材の前歯を入れている人はほぼ皆無で、みんなセラミックを入れていると思います。これは厚ぼったく、透明感のない、変色しやすい、剥離しやすい、汚れの付着しやすいプラスチック素材より、そういった欠点のないセラミックを入れたいからです。患者さんにセラミックを勧めるのもそういった理由からです。もちろんなんでもかんでも自費治療を勧めるのは間違いです。例えば歯周病でもう何年も持たないだろうという歯に高額な自費治療を勧めるのは患者さんの利益になりません。しかしそういった特殊な例を除けば自費治療は患者さんの利益になるケースがほとんどだと思います。

とにかく歯医者は虫歯が世の中に増えればうれしいという風には考えていません。虫歯は患者さんの敵、そして歯科医師はその本質として虫歯と戦う戦闘員なのです。