コロナと歯医者の3年間
本日、新型コロナウイルス感染症は5類へ移行され、3年前の1月に始まったこの一連の騒動に一段落がついたように思えます。もちろんこれは法律の運用が変更されたというだけで、コロナウイルスがこの世から無くなるわけではなく、むしろ足下では感染者は増加傾向との事で、決して感染対策をしなくてよくなったわけではありません。そのことは皆さん認識されていらっしゃる様子で、今朝電車に乗って乗客の皆さんを見るとほとんどの方がマスクをされていて、改めてすぐにはコロナ前には戻らないんだなということを印象付けられました。
しかしながら、やはり各種規制が緩和されたこともあり、ゴールデンウィークはどこも混雑していたようで、以前よりは日常を取り戻していることも実感できることも確かです。
この3年間を歯科医院の歯科医師の視点で振り返るとそれは大変なものでした。私は2020年の1月、新型コロナウイルスの日本での初めての感染例が報道された頃に、これは絶対日本での流行は防ぎきれないと確信し、自分も含めて世の歯科医院はどうなってしまうのだろうと恐れおののいたことを思い出します。
世の中の多くがそうであったように、歯科医院の実際の危機も2020年4月に起こりました。4月7日には緊急事態宣言が発令され、飲食店などを中心に多くの対面ビジネスが休業を余儀なくされましたが、歯科医院は医療機関ということで休業要請の対象外でした。それでも歯石除去やクリーニング、定期健診といった急を要さない処置はほとんど無くなり、痛みがあるなど急ぎの治療の必要性がある患者さんしか来ないような状況で、通常時に比べて売り上げは3分の1程度しかない状況で、経営的には壊滅的状況でした。
続く5月も売り上げは通常の半分程度でしたが、6月にはリバウンドが来て通常よりやや多いくらいであったものの、7月以降は2022年を迎えるまでの一年半は概ね低調で、コロナ禍での歯科治療が怖いという方が一定数いらっしゃるんだなという印象でした。
初めて緊急事態宣言が出された頃の現場はそれは戦々恐々でした。なにせ歯科医師は口からの飛沫の一番近くで仕事をする職業ですので、世の中からは危険な職業だと思われていましたし、我々は感染者が自分の歯科医院に来たらおしまいだとも思っていました。
その頃は、コロナに罹って生命の危機に陥ることももちろん恐れましたが、それ以上にもし調布で最初にコロナが出た歯科医院になってしまうと風評等で患者さんが来なくなってしまい潰れてしまうのではないかという恐怖の方が大きかったように思います。
しかし、その年、2020年の夏頃には、歯科医院は意外と安全で大丈夫だぞと思うに至りました。その頃クラスターが出るのは入院設備のある病院や老人ホームばかりで、歯科医院のクラスターは例が無く、海外の研究でも歯科医院はコロナに強いという報告が入るようになってきました。このことで通常の感染防御対策をしていれば歯科医院内でのコロナ感染は起こりにくいと確信し、怖がる必要はないと思うようになりました。
しかし一部の患者さんにとってはそうではなかったようで、今でも「コロナが怖くて受診を控えていたけどあちこちボロボロになってこれはもうだめだなと思って来た」というような事をおっしゃる患者さんがちらほらいらっしゃいます。
オミクロン株は致死率が低いとはいえ高齢者では決して無視できる致死率ではなく、コロナが怖いので積極的に外出していろんな人と会うことを避けているご高齢の方はたくさんいらっしゃいます。歯科医院にはそういった高齢者の方もいらっしゃる場所ですので、当院では新型コロナウイルスに対する感染防御対策は引き続き行っていく予定です。
この3年間は歯科医院にとっても大変な3年間でしたが、ひたすら感染防御対策に追われた3年間でした。歯科では肝炎やHIVに対応する意味でも、新型コロナウイルスの流行の前から感染防止というのは仕事をする上で大きなテーマの一つでした。この3年間はその大切さを学びなおす機会になったと思います。