京王線の地下化と歯科治療

地下化工事と歯科治療の共通点

京王線の調布、布田、国領の各駅が地下化されてしばらくたちますが、踏切がなくなり、駅ビルのトリエやビックカメラ、映画館ができるなど、調布の街の様子も大きく様変わりしました。突拍子もないタイトルですが、京王線の地下化と歯科治療には共通点があります。それは機能を維持したまま構造を変えるということです。

京王線の地下化はもともと動いていた電車を一日も止めることなく工事を進め完成させました。これは実は大変なことで、もしゼロから作るのであれば工事はもっと簡単であったし、工期もずっと短く済んだと聞いています。京王線の地下化だけではなく、新宿、渋谷、横浜などのターミナル駅の工事もそうです。人々が毎日使っている動線を全く止めずに、線路を水平方向や垂直方向に移設したり、電車が動いている線路の上にビルなどの施設を建てたり、大変難儀なことを行っています。工事の順番を考えないとどこかの線路を止めることになったり、構造的に脆弱になり工事の安全性に問題が出たり、ある場所を先に完成させると別の場所が工事ができなくなったりと様々な問題が考えられます。

歯科治療で一番難しいこと

歯科治療も似ています。歯は治療で通院中でも患者さんは毎日食事をしなければなりません。例えば一本虫歯があったとして、本来ならば早くその歯を治療したいところですが、その歯はブリッジの土台にしなければならない歯で、もう一方の土台の歯の根の治療を待たなければならないこともありますし、そうこうしているうちに反対側の歯が痛み出して、その歯の治療を中断しなければならかったりすることも起こりうるわけです。そんな中でも患者さんは顎の強力な筋肉を使って毎日食事をするわけですから、脆い仮歯や、取れやすい仮の詰め物などを駆使しながらも、なんとか咀嚼するという歯の機能を保ちながら治療を進めなければなりません。歯科治療の一番難しいところは実はそういうところにあるのではないかと思います。

しかし一番そういった意味で最もシビアなのは心臓などの重要臓器の疾患を治療する医師なのかもしれません。歯であれば1分くらい噛めない状態があってもなんの問題もありませんが、心臓が1分間機能しなかったら大問題です。歯科治療であれば最悪の場合、全く噛めない状態がしばらく続いたとしても飲むことによって最低限の栄養は取れますし、それが数日であれば少なくとも死ぬことはありません。ですから生命維持に不可欠な重要臓器を常にモニターし、処置や手術、投薬管理をする医師の仕事は人の為す業を超えていると言っても過言ではないと思います。

いずれにしても機能を保ちつつ構造を変える、あるいは治すということは想像以上に大変な事なのです。